日本気管食道科学会会報
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症例報告
降下性壊死性縦隔炎術後の嚥下障害
―特に患者, 家族の障害の受容と治療のゴールについて―
伊藤 裕之加藤 孝邦
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2005 年 56 巻 6 号 p. 495-500

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抄録

この論文は, 降下性縦隔炎の術後に嚥下障害を起こした患者の報告である。
患者は, 61歳の糖尿病のある患者である。魚を食べた時に咽頭痛があった。翌日, 耳鼻咽喉科医を受診した。異物は発見されなかったが, 2日後に頸部が腫脹し, 頸部膿瘍と診断された。気管切開術が施行された。頸部と縦隔の排膿のために頸部切開術が施行され, 5日後に縦隔切開術が施行された。その後, 敗血症性ショックになり心停止を起こし, 低酸素脳症になった。救命されたが, 嚥下障害と固縮による四肢の運動障害が後遺症になった。喉頭摘出術が勧められたが, 患者は音声の喪失を受け入れられなかった。発症5カ月後に当院に入院した。咽頭食道透視検査では舌骨, 喉頭の運動障害が認められ, 大部分の造影剤を誤嚥した。患者と家族は喉頭摘出術を拒否した。輪状咽頭筋切断術より喉頭挙上術が有用と思われたが, 頸部の癒着や全身状態が不良のために行えなかった。患者は音声を希望したので, 気管切開孔を閉鎖した。気管切開孔を閉鎖した後, 肺炎を起こし, 患者は喉頭摘出術を受け入れた。嚥下障害の治療方法を決める時には, 患者や家族の障害の受容を考慮すべきである。

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© 2005 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
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