日本気管食道科学会会報
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原著
放射線・化学療法時に気管切開を必要とした
喉頭癌・下咽頭癌症例の検討
転帰と気管孔閉鎖の規定因子の検討
西川 仁石田 英一日高 浩史
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2012 年 63 巻 1 号 p. 15-24

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抄録
放射線療法および放射線化学療法時に気管切開を要した喉頭癌・下咽頭癌症例の転帰と,喉頭温存率,気切孔の閉鎖率,気切孔閉鎖不可の理由,気切孔閉鎖が可能な術前要因を検討した。
2003~2008年に磐城共立病院で,根治的な放射線化学療法もしくは放射線療法に気管切開を要した喉頭癌4例と下咽頭癌9例の計13症例を対象とした。
生存例は5例 (38%) であり,下咽頭癌症例の生存は1例 (11%) であった。喉頭温存率は69% (9/13) であったが,気切孔閉鎖率は全13症例で23% (3/13),最終生存5名中では40% (2/5) であった。気切孔閉鎖不可の理由として,原病死例が多く,生存例でも遷延する喉頭浮腫等の上気道狭窄が主であった。気切孔閉鎖が可能となる術前要因は,有意差は認めなかったが,T2症例および声帯麻痺のない症例に高い関連を示した。
放射線療法および放射線化学療法時に気管切開を要した喉頭癌・下咽頭癌症例の転帰は悪く,喉頭温存可能の生存症例であっても気切孔閉鎖の可能性は低い。喉頭温存目的に放射線療法を希望される患者・家族には気切孔閉鎖の現状を治療前に説明していくことが治療後の信頼関係維持に大切と考えた。
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