抄録
高齢化社会が進んでいく中,日本の肺癌患者の半数以上が75歳以上である。しかし,高齢者には加齢に伴う臓器機能の低下や合併症のある患者が多く,個々の病態に差があり,効果や毒性が予測しにくい。従来の標準的治療を確立するための大規模臨床試験は選択条件に20歳から74歳までの年齢規定を設けていたため,日常診療で高齢者にすぐ応用できるものではなかった。高齢者,75歳以上を対象とする臨床試験は,近年少しずつ集積されてきた。患者数が増加する中で,臓器機能上に個人差の多い高齢者肺癌については効率よく,また効果的に機能評価を行いつつ,適切な治療選択をすることが重要である。