抄録
気管切開後に気管狭窄に伴う気管食道瘻を生じた例を経験した。症例は15歳男性で,交通事故後の意識障害に対して気管切開が実施された。その後抜管されたが,肺炎を反復するため,誤嚥を疑われ嚥下訓練が実施されていた。CTで気管狭窄が指摘されたが,食道造影検査では誤嚥や気管食道瘻は認めなかった。気管狭窄に対して当科で気管狭窄除去とTチューブ留置術を実施したが,術中に気管狭窄部に気管食道瘻孔を認めた。頸部局所皮弁で瘻孔部の気管と食道間に移動し閉鎖させた。術後瘻孔の再縫合を行ったが,その後肺炎はきたしていない。術後1年後にTチューブは抜去し,気管狭窄は消失した。気管切開後の気管食道瘻は比較的まれである。病歴で誤嚥が疑われる場合には検査で確定できない場合でも気管食道瘻を念頭において手術に臨むべきである。