2016 年 67 巻 4 号 p. 264-271
2012年に本邦でセツキシマブが頭頸部癌に適応拡大されて以来,進行頭頸部癌に分子標的薬併用放射線療法 (BRT) を施行されることが増えてきた。それに伴い,一次治療としてのBRT後に腫瘍が残存,もしくは再発し,救済手術が必要となる症例もしばしば認められる。BRTでは化学放射線療法 (CRT) に比較し,手術に対する影響が軽度であることが期待されているが,本邦におけるBRT後の救済手術に関する報告は未だ限られており,十分な検討はなされていない。
われわれはこれまでBRT後の救済手術を3例経験した。①下咽頭癌cT3N0の局所再発に対して咽頭喉頭頸部食道摘出術,右頸部郭清術と遊離空腸による再建を行い,特に問題なく経過している。②中咽頭癌cT3N2bM0の頸部再発に対して左頸部郭清術を行い,一時的に創部のわずかな離開を認めたが問題なく経過している。③声門上癌cT4aN2bの局所再発に対して喉頭摘出術と右頸部郭清術を行うも,術後創傷治癒が遷延し創部感染をきたし,局所皮弁での再建術を要した。この症例では組織の血流は乏しく,重篤な線維化をきたしていた。症例数が少なく今後更なる検討が必要であるが,BRT後の救済手術でもCRT後と同様慎重な対応が必要と考えられた。