日本気管食道科学会会報
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特集:気道感染症Update
気道感染症Update
河合 伸
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2016 年 67 巻 5 号 p. 325-330

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抄録

気道感染症は,解剖学的および病態の違いから,上気道感染と下気道感染に分けられる。上気道感染症は,主としてウイルス感染であり,その多くは自然治癒する。しかし急性喉頭蓋炎,扁桃周囲膿瘍,咽後膿瘍など呼吸困難を伴い重症となる細菌感染もみられる。また近年認められているヒトメタニューモウイルス (human metapneumovirus : hMPV-B2) など新興ウイルス感染にも注意する必要がある。一方,下気道感染症の多くは細菌感染である。気管支拡張症,COPD,陳旧性肺結核などが多くみられる。これら,慢性気道感染症の起炎菌は,初期にはインフルエンザ菌,肺炎球菌などが多いが,繰り返す感染症および抗菌薬治療により最終的には緑膿菌に置き換わる。緑膿菌は,バイオフィルムの形成やquorum sensing機構などにより抗菌療法に抵抗性となり難治化する。また近年では,PRSPや市中型MRSAが増加しており気道感染症においても今後注目する必要がある。

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