2016 年 67 巻 5 号 p. 339-346
結核対策により日本の結核罹患率は10万対15.4 (2014年) まで減少したが,欧米先進国の結核罹患率が10万対3~5前後の現状と比較すると依然として高率である。2014年には19,615人の結核患者が新たに登録されている。わが国は結核の中蔓延国である。臨床現場では結核患者に常に遭遇する機会があることを認識し,結核患者を早期に診断し,適切な治療を行わなければならない。
近年,NTM症の増加が指摘されており,特に中年以降の基礎疾患のない女性に発症した肺MAC症の増加が顕著である。NTM症に関しては全国レベルのサーベイランスはなく,いくつかの研究グループの推定罹患率が報告されている。それによると2007年では10万対5.7であったが年々罹患率は上昇し,2014年には10万対14.7と推定されている。NTM症の増加の理由については,高齢化,治癒しない患者の蓄積,疾患に関する関心の高まり,診断技術の進歩などが指摘されているが明確ではない。MAC症が最も多く約80%を占め,M. kansasii症 (8%),M. abscessus症 (3%) と続く。M. kansasii症以外は治癒は困難である。