2017 年 68 巻 1 号 p. 14-19
下咽頭・喉頭などの頭頸部癌や頸部食道癌に対する切除後再建の第一選択は遊離空腸移植であるが,胃管が選択される場合もある。当施設では吻合をより確実にするために,胃管再建に血管吻合を付加している。頭頸部癌重複食道癌あるいは頸部食道癌と診断し,胃管再建と血管吻合付加を行った9例を対象に手術成績の検討を行った。切除術後に3.5 cm幅の大彎側細径胃管を作成し,後縦隔経路で胃管を挙上。頸部吻合の後に胃管大彎の血管と頸部の血管での血管吻合付加を施行した。症例は下咽頭癌と胸部食道癌の同時性重複が2例,喉頭癌と胸部食道癌の同時重複が1例,喉頭癌と頸部食道癌の異時性重複が2例,頸部食道癌が4例であった。術式は咽頭喉頭食道切除が7例,咽頭喉頭温存・食道全摘が2例であった。手術時間 (中央値) は762分,出血量 (中央値) は845 gであった。縫合不全を根治的CRT後の1例 (11.1%) に認めた。全例で吻合部狭窄を認めず,術後12日 (中央値) で食事を開始し,術後27日 (中央値) で退院となった。遊離空腸再建の適応とならない頭頸部癌重複食道癌・頸部食道癌に対する大彎側細径胃管再建および血管吻合付加は,縫合不全や狭窄の可能性が少ない有用な術式であると思われる。