日本気管食道科学会会報
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症例
縦隔膿瘍との鑑別を要した食道粘膜下膿瘍の1例
野村 文敬立石 優美子角 卓郎清川 佑介川田 研郎東海林 裕宮脇 豊中島 康晃河野 辰幸朝蔭 孝宏
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2017 年 68 巻 4 号 p. 314-319

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抄録

深頸部膿瘍から進展した縦隔膿瘍は致死率も高く直ちにドレナージ等の処置を要する疾患である。今回われわれは縦隔膿瘍との鑑別を要した食道粘膜下膿瘍の症例を経験したので報告する。

症例は65歳女性,主訴は咽頭痛と頸部腫脹。外来にて気道閉塞を認め,気管内挿管がなされた。CTにて左の扁桃周囲膿瘍および深頸部膿瘍を認め,さらに縦隔へ連続し気管分岐部まで進展する膿瘍形成を認めた。同日頸部切開排膿術を施行した。その後も縦隔の膿瘍が残存,再度外切開を施行したがやはり縦隔からの排膿は得られなかった。経過中,膿瘍はさらに増大し,全身状態悪化を認めた。所見から食道壁内の膿瘍が疑われ,消化管外科へコンサルテーションの結果,食道粘膜下膿瘍の疑いとなった。内視鏡下に切開を試みたところ大量の排膿が得られ,その後全身状態は急速に改善した。

食道粘膜下膿瘍と縦隔膿瘍との鑑別には造影CTが有用である。縦隔膿瘍では周囲組織へ進展する膿瘍腔を確認できるが食道粘膜下膿瘍の場合は限局した膿瘍腔が形成され,また膿瘍周囲が強く造影される。疑わしい場合は上部消化管内視鏡を施行するべきと考えられる。比較的稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する。

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