日本気管食道科学会会報
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症例
声門下狭窄症に対する輪状軟骨鉗除による気管孔拡大形成術の検討
稲木 香苗大久保 啓介猪狩 雄一三橋 正継
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2018 年 69 巻 4 号 p. 236-243

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抄録

声門下狭窄症は声帯より下部の輪状軟骨周囲が先天性,または後天性に狭窄し気道狭窄による呼吸困難をきたす。後天性声門下狭窄症は呼吸管理における不適切なサイズの気管内チューブの使用,高位気管切開などが原因となり発症する。多くの症例では気道狭窄による呼吸困難に対して気管切開術が行われるが,長期間気管カニューレの挿入を余儀なくされ,カニューレ抜去困難症を併発し治療は難渋する。治療はこれまで複数の術式が報告されているが,いずれの術式においても治療は長期間,複数回の手術を要することが多い。最終的な治療目標は,気管孔肉芽瘢痕の処置,気道の安定,発声の回復,カニューレ離脱,気管孔閉鎖など症例によりさまざまである。輪状軟骨鉗除による気管孔拡大形成術は早期に発声やカニューレ離脱が可能となり,在宅でも気道管理が安全な術式である。本術式は気管切開孔を輪状軟骨レベルまで口側に拡大して縦長の気管孔を作成するために,カニューレ抜去困難症の原因となる気管孔肉芽瘢痕や変形に対する手術を同時に行うことができる利点がある。今回われわれは4例に対して本術式を行い,うち2例は気管孔閉鎖に至った。当院での本術式の臨床経過について報告する。

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