日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
特集:アルコールと気管食道科
気管食道科領域におけるアルコール発がん
─広域発がん現象─
玉置 将司大橋 真也武藤 学
著者情報
ジャーナル 認証あり

2018 年 69 巻 5 号 p. 275-281

詳細
抄録

アルコール摂取は,食道扁平上皮癌および頭頸部扁平上皮癌の主要な危険因子である。特にアルコール代謝産物である「アセトアルデヒド」はDNA損傷や染色体異常を誘導し,食道,頭頸部の発がんにおいて中心的な役割を果たすと考えられている。アセトアルデヒドは主に肝細胞内のアルコール脱水素酵素1Bによりエタノールから生成され,次いでアルデヒドデヒドロゲナーゼ2(ALDH2)によって酢酸へ代謝される。ALDH2には,遺伝子多型があり,東アジア人の30〜40%が保有する変異型ALDH2ではALDH2活性が低下しているため,アルコール摂取後の血液,唾液,呼気中のアセトアルデヒド濃度が上昇し,この病態が食道および頭頸部における発がんリスクと強く関係している。さらに,食道扁平上皮癌および頭頸部扁平上皮癌はしばしば同時性または異時性に多発し,「フィールド癌化現象」として知られている。本稿では,アセトアルデヒドにより誘導されるDNA損傷を中心に,食道および頭頸部におけるアルコール発がんの機序について最近の知見を含め概説する。

著者関連情報
© 2018 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
次の記事
feedback
Top