日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
症例
硝酸イソソルビドと芍薬甘草湯が奏功した食道運動機能障害による嚥下困難例
梶山 泰平兵頭 政光
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 73 巻 4 号 p. 279-285

詳細
抄録

嚥下時に咽喉頭部の違和感やつかえ感,嚥下困難感などを訴える患者では,時に食道疾患が原因となることがある。今回,食道運動機能障害による嚥下障害例を経験し,硝酸イソソルビド,カルシウム拮抗薬,および芍薬甘草湯の併用により症状の改善が得られた。症例は62歳,男性。約10カ月前より錠剤を内服する際に嚥下困難感を自覚していた。1年間で約10kgの体重減少があった。嚥下内視鏡検査および上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかったが,嚥下造影検査で上部食道括約部の開大障害,胸部食道の蠕動運動障害,下部食道括約部の開大障害を認めた。食道運動機能障害と診断し,硝酸イソソルビド,カルシウム拮抗薬,芍薬甘草湯の投薬を開始した。投薬後症状は徐々に改善し,1カ月後の再診時には嚥下困難はほぼ消失した。嚥下障害の原因は多岐にわたることから,嚥下障害症状が長期にわたって持続したり進行性であったりする場合には食道疾患も鑑別することが必要と考える。

著者関連情報
© 2022 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top