2024 年 75 巻 4 号 p. 256-261
喉頭に発生する軟骨腫瘍の多くは低悪性度腫瘍で,手術摘出が治療の基本となる。摘出範囲や喉頭温存の可否についてはその発生部位や進展範囲を考慮し,決定する必要がある。輪状軟骨に発生した軟骨肉腫に対し,喉頭温存手術を行った症例について報告する。症例は60代後半の男性。呼吸苦を主訴に受診した。声門下に粘膜下腫瘤性病変を認め,各種画像検査にて輪状軟骨原発の低悪性度の軟骨肉腫を疑い,喉頭温存手術を行った。病理組織診断にてGrade Iの軟骨肉腫と診断,術後約4年経過したが再発転移はみられていない。気管孔は残存しているが,良好な発声,嚥下機能が保たれており,高いQOLを維持できている。術後に広範な輪状軟骨欠損を伴う場合でも,喉頭温存手術を行うことは選択肢として考慮される。一方では術後喉頭狭窄をきたした場合,慎重な気道管理を行う必要があることも留意すべきである。