2011 年 13 巻 2 号 p. 45-52
転倒による医療事故は、毎年増加傾向が見られる。昨年度の医療事故総数1895件中点等による医療事故は399件と約3割を占めておりそのうちの多くが、重篤な障害に繋がっている。このように、転倒による医療事故は大きな社会問題であり、現在医療における解決課題の一つである。本研究では、転倒による医療事故の中でも最も危険性の高い夜間等における立ち上がり時の後方へのスリップ転倒を想定し、衝突モデルダミーを用いて衝突時の転倒姿勢の変化や床の材質によってどのような頭部外傷を受けるか実験を行った。その結果、後方へのスリップ転倒は初速度が0の静止状態であっても頭蓋骨折や急性硬膜外血腫など深刻な頭部外傷を与える事が明らかとなった。このことは、病棟における転倒による頭部外傷を予防する上で大きな指標の一つになると考える。