2009 年 104 巻 9 号 p. 699-711
酒米研究会が収集した気象データの明らかな試料を用いて,気象データから米の溶解性に関する酒造適性を予測できるかどうかを検討する目的で,気象データとデンプン特性及び蒸米消化性の関係について解析した.出穂後1ヶ月の平均気温はアミロペクチン短鎖/長鎖比及びアミロース含量とは高い相関関係を示した。また,出穂後1ヶ月の平均気温は,DSCやRVAの測定値とも高い相関性を示した。酒米統一分析条件での蒸米消化性(デンプンの消化性)は出穂後1ヶ月の平均気温が23℃付近で消化性が高くなるような関係を示した。もろみに近いデンプンの老化を反映させた条件では,出穂後1ヶ月の平均気温と蒸米の酵素消化性(デンプンの消化性)は直線的な負の高い相関性を示した。それぞれの条件で出穂後1ヶ月の平均気温でデンプンの消化性を予測する式を構築し,この式より2008年度の試料について予測できるか検定したところ,予測値と実測値は出穂後1ヶ月の平均気温でどちらの条件でもデンプンの消化性を比較的精度良く予測できた。また,タンパク質含量は気温と強い相関がみられなかったものの,タンパク質の消化性はデンプンの消化性と同様な傾向を示し気温と有意な相関性を示すことがわかった。以上の結果から,出穂後の1ヶ月間平均気温によってかなり高い精度で米の溶解性に関する酒造適性を予測できる可能性が示された。