2015 年 110 巻 5 号 p. 298-305
清酒業界においては,清酒の需要低迷・消費激減から危機感を感じ,今までに無いタイプの清酒を製造する事を模索している。その解決策の一つとして,純粋培養酵母を使用した清酒製造ではなく,広い自然界から有用な清酒酵母を分離し清酒製造に応用する方法である。このような自然界からの酵母分離は,様々な分野で試みられているが目的とする酵母の分離が難しいのも現実である。しかしながらその困難さを克服し,製品化に至った成功例として筆者が行っている花から分離した「花酵母」による清酒製造であることは間違いないところである。筆者は解説文の中で清酒製造用酵母の過去と現在行われている酵母分離方法を紹介し,分離酵母を用いて製造された清酒の特徴を細かく紹介している。また,スクリーニング源採取月,平均気温と分離効率の関係など興味あるデータも掲載されていて研究者にとっては参考になることも多い。是非とも一読願いたい。