日本醸造協会誌
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研究
サツマイモの加熱方法が芋焼酎香気に与える影響
吉﨑 由美子松山 晃佑大庭 暁紘園田 舟奥津 果優玉置 尚徳髙峯 和則
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2015 年 110 巻 5 号 p. 349-356

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抄録

 芋焼酎製造のためのサツマイモの恒温器による加熱方法を検討した。恒温器を用いてサツマイモの中心温度が79.5℃に到達後,1時間加熱を継続する恒温器加熱および恒温器加熱後に蒸煮1時間を加えた恒温器+蒸煮加熱を行い,従来の加熱法である蒸煮加熱によるサツマイモとの成分の比較およびそれらにより製造した芋焼酎の香気の特徴について比較した。
1.恒温器加熱サツマイモおよび恒温器+蒸煮加熱サツマイモのマルトース含有量は,蒸煮サツマイモより著しく低く,恒温器加熱サツマイモの糊化度は他の2種の加熱法より著しく低かった。
2.官能評価より,恒温器加熱サツマイモおよび恒温器+蒸煮加熱サツマイモ製芋焼酎において,香りでは甘香およびフルーティの評価が高く,味では甘味および濃厚の評価項目が高い傾向を示した。
3.官能評価より,恒温器加熱後に蒸煮を行うことで,生イモ臭がなくなることが示された。
4.GC-MS分析結果より,恒温器加熱サツマイモ製芋焼酎は高級アルコールやアルデヒド,エステル類など,大部分の揮発成分において蒸煮サツマイモ製芋焼酎より高い含有量を示した。
5.GC-MS分析結果より,恒温器+蒸煮加熱サツマイモ製芋焼酎は恒温器加熱サツマイモ製芋焼酎よりほぼすべての揮発成分の含有量が低くなり,蒸煮サツマイモ製芋焼酎の値に近づく傾向を示したが,一部のエステル類は蒸煮サツマイモ製芋焼酎と比較して高い含有量を示し,官能評価における甘香およびフルーティな香りに寄与していることが示唆された。

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