抄録
清酒の需要も低迷し,消費も伸び悩んでいるなかで,高精白の原料米使用の大吟醸酒に対する関心は高い。大吟醸酒は果実様の香りに特徴を有し,その主成分はカプロン酸エチル及び酢酸イソアミルであることから,この香りを高めるための種々の酵母育種,育種酵母を用いての清酒製造技術開発がなされてきた。しかしながら,これらの酵母を使用しても,吟醸香の高い清酒を醸造するためには,高精白の原料米や低温での発酵が不可欠となっている。そこで筆者は高精白を用いなくてもフルーティーな香りを醸す酵母を育種し,米の旨味を減少することのない新しい清酒の商品化に成功し,本稿において商品化のための新規高香気生成酵母の育種方法及び育種酵母のゲノム解析まで詳しく説明していただいた。清酒開発のあたらしい道を切り開き,清酒の可能性を追求した大変価値のある解説文である。是非とも一読願いたい。