清酒酵母の繁殖と水素「イオン」濃度に就て

抄録

一、「ハイタック」液に乳酸鹽酸及苛性曹達を添加し清酒酵母を培養したるに何れも水素「イオン」濃度を高む、又本實驗程度の酸類添加は大體酵母數は標準に比較して増加したるも「アルカリ」添加は酸類に比し其の増加數輕少なり
一、 酸類を添加し水素「イオン」を高めたるものは醗酵遲れ且つ清澄速かなり、「アルカリ」添加は本實驗程度の水素「イオン」濃農に於ては標準と比較し大體變化を認めず
一、 麹液に乳酸鹽酸及「アルカリ」を添加したる場合大髏酵母の繁殖數を増加したも、但し酸を添加しPH.=3.3以上の濃度に於ては却つて不良なり、「アルカリ」添加はPH.=6.6なるも酵母繁殖には別に支障を與ふる事なきが如し
一、 酒母の場合は湧付當時はPH.=3.8-4.0にて熟成酒母に於てはPH.=3.5-3.6となり停止するが如く思はる
一、 醪の醗酵に於ては留分當時PH.=4.6内外なるも漸次水素「イオン」高まり (PH.=3.8-4.1) となり、搾揚に於て殆PH.=4.0-4.2に停止するを普通とするが如し
一、 清酒の水素「イオン」濃度はPH.=4.1-4.2を普通とする如く時にPH.=4.6を呈するものあり