日本釀造協會雜誌
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清酒及び合成清酒の調熟に關する研究 (第四-五報)
化學的調熟法に就て
中島 文雄
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1941 年 36 巻 5 号 p. 330-334

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抄録

化學的調熟法とは過酸化水素に依る酸化調熟試驗の結果を要約すれば次の如くである。
(一) 新酒に對し過酸化水素〇・〇〇二-〇・一六〇%を添加し二五度及び三五度に於て七日間調熟せしめた後室温に一〇日間放置したものに就て官能審査を行つた結果過酸化水素添加量は二五度に於て〇・〇一-〇・〇二%、三五度に於ては〇・〇〇四-〇・〇〇一%程度で相當程度の調熟効果のある事を認めた。
(二) 過酸化水素の調熟効果は第一調熟効果の他第二調熟効果もある事を認めた。
(三) 過酸化水素添加量〇、〇四以上のものは調熟酒に於て過酸化水素の香味を多少感ずる故過酸化水素單獨使用の調熟には〇・〇四%以上を用ゆる事は不適當である。
(四) 清酒中に於ける微量過酸化水素の定量法に就いて述べた。
(五) 調熱酒に殘存する過酸化水素の量は極く微量で添加した過酸化水素の量は正確には比例しない。調熟温度は二五度のものが三五度のものより殘存量は少い。而して其の殘存量は〇・〇〇二-〇・一六〇%添加のものに於て〇・〇〇〇〇一七-〇・〇〇〇一六二%程度で何れの場合に於ても其の大部分は分解消失する。
(六) 新酒に添加された過酸化水素の消費は新酒中の還元性物質に依り一部消費せられるその大部分は新酒中に存在するカタラーゼに依るものとした。
(七) 過酸化水素添加量と調熟酒の水素イオン濃度との關係は過酸化水素の添加量が一定量に達する迄は過酸化水素の増加に從て水素イオン濃度は増大するが、一定量以上に於ては過酸化水素を増加しても水素イオン濃度は一定である。而して過酸化水素單獨使用に依る調熟に於ける該過酸化水素添加の最適量は略此の水素イオン濃度の一定となるべき點と一致する。
(八) 調熟は液の酸化還元電壓に關係ある事を指摘した。
(九) 調熟酒の水素イオン濃度と殘存過酸化水素量との關係は殘存過酸化水素量は過酸化水素添加量の等しい試料に於ては二五度に於けるものが三五度に於けるものより少々其の水素イオン濃度は高い。

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