日本釀造協會雜誌
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酒造原料效率
長谷川 吉郎
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1943 年 38 巻 11 号 p. 804-819

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抄録

(一) 酒造原料效率は種々の條件によつて増減するが原料米の搗精及醪最高温度により影響が最も著しい。
(二) 原料效率は搗精の進行に順じで向上し原料米量減少の一部を償ふ。
搗減歩合〇・二〇前後の經濟精白點に於ては之の補償は殆んど完全に行はれるが、搗減歩合〇・一五前後以下では之の補償割合は著しく低下する。從つて酒造原料米の搗減は經濟精白度迄高めるか或は搗減歩合〇・一五以下に迄低下させるかの二途である。
(三) 原料效率を左右する各條件は浸米吸水適度に比例する。
經濟精白度は浸米吸水適度の急増點にある。
(四) 經濟精白度は粒子厚減歩合 (米粒厚さの三乘比率) の〇・二五前後 (米粒厚さの減少約〇・一に相當する) にある。
(五) 原型搗精では粒子厚減歩合は重量搗減歩合よりも高率を示すが圓型搗精では之れに及ばない。
(搗) 精方法は必ず原型搗精でなければならない。圓型搗精では原料效率の増加率が低く且經濟精白點が無い。
(六) 原料米は約七%前後の酒造不要不適成分を含む。之れは粕量に換算して九粕に相當する。
粕量を低下させる爲めの操作は原料效率の低下を招き折角の粕量の減少を相殺して向の效果も齎さない場合が多い。殊に品温の高昇によつて之れを望む事は愚策の最なるものである。
(七) 品温の昇高は原料效率の著しい低下を招く。
高温經過は蓋打によつて其の損耗の一部を救ふことが出來るが尚低温經過には及ばない。
(八) 醪品温經過には或る臨界點があり、之れを下るときは急に粕量が増加して清酒收量が低減する。之の臨界點は低精白度原料米では高温にあり、從つて其の爲めの原料效率の低下は免れない。
(九) 醗酵の急進或は苛沸 (乏糖醗酵) 經過では原料效率の低下する傾向がある。
(一〇) 醪經過を順調に導き原料效率の低下を防ぐには原料米の實質に相應して汲水の適度がある。本縣に於いては製成酒に原エキス度三八度臺を得る程度の醪仕込濃度が適度である。

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