日本釀造協會雜誌
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醤油粕利用に關する研究其の四
松本 憲次齋藤 幸彌
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1943 年 38 巻 11 号 p. 828-834

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抄録

一、醤油粕の水洗篩別せる蛋白質含有量の多き部分のアルカリに可溶性部分はアルカリ濃度により相違があるけれども大體一%位で八五%餘の溶出を見る。又〇・五%に於ても七〇%餘の溶出する。而して溶出蛋白質部の約三割位は酸に依つて沈澱しない。
一、醤油粕の水洗篩別せる蛋白質部のパパインに依る分解中、原料中の窒素に封し二四時間位作用せしめた場合に三割餘の窒素量が溶出せられ、尚可溶物の成分が消化成分に對しては二六・五〇九%(二四時間の部) 位となる。即ちアルカリ可溶成分より可なり低位にある。
一、消化作用試驗中試料の粉碎程度が可なり影響する。
一、醤油粕のアルカリ抽出液中の酒精沈澱物は五〇%以上であるが、水に溶かすと不可溶部分が可なり多い。此の際の沈澱物は、乾燥物として總窒素一一・〇六二七%炭水化物三・四八五% である。
然しパパイン作用により可溶液の酒精沈澱物は總窒素は無水物百分中七・七六二五、炭水化物は一七・六二二二%と云ふ工合にアルカリ作用せしめた場合より炭水化物が多いと云ふ事が窺はれる。
一、水洗醤油粕を製麹し後消化せしめペプトン態物質を採取した原料麹に對し五・七四三%位收得したに過ぎない。尚製麹に當り廢糖蜜を添加した場合はペプトン收量は幾分多く尚五四號麹菌よりは二〇八號菌の方は成績良好である。
一、醤油粕麹を自己消化せし場合、消化の際のPHと時間が影響を及ぼす様である。消化期間は過度になつては却つて酒精沈澱のペプトン態物質が減少する様である。
一、醤油粕の方はペプトン態物質を得るには落花生粕よりも有利である。即ちアミノ態窒素よリペプトン態窒素が多いのである。
一、醤油粕麹を五四號菌と二〇八號菌とを使用して自己消化の生産物の様子を檢べたが、二〇八號方はペプトン態物質が多い。尚該麹の酸分解の場合のペプトン態窒素とアミノ態窒素の比は五四號の方が二〇八號菌よりアミノ酸量が高いのである。

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