1944 年 39 巻 11-12 号 p. 100-101
1. 葡萄酒には屡々清酒の火落香様異臭を有するものがある。葡萄酒としては別段異臭とせね由であるが確かに不快臭の部に屬する。
2. 此の臭は火落酒と同様のものと見做しヂアセチルの定量を行つた處確かに臭の強いもの程ヂアセチル含量が多いのを認めた。
然し此の臭を認めぬ葡萄酒にも常にヂアセチルの少量を含有し居る事を知つた。
3. 葡萄酒中のヂアセチルの成因は未だ不明であるが其の量は同時に定量した揮發酸量とは平行せす寧ろ相反する様でつて少くとも萄葡酒釀造中惹起する醋酸菌の醋酸醗酵により生成したものでは無い様である。