日本釀造協會雜誌
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酒類の調味法に関する試験 (第3報)
醸造経過中の含窒素成分の消長について
山田 康郎
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1961 年 56 巻 11 号 p. 1151-1146

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抄録

1.米糠および粗白米麹を原料として, 糖質の不足をぶどう糖で補糖し, 常法の清酒もろみに準じて調味液製造もろみ仕込を行った。その醗酵後期に88%原料Alcをそのまま添加して, 酵母を枯死させた後加水して死亡酵母の自己消化によってアミノ酸を生成させ, それを旨味成分とする調味液を正常もろみの後期に添加して再醗酵を行なわせる製造方法について試醗を行った。
2.本報において, その試醸経過中における酵母の自己消化による含窒素成分およびアミノ酸の種類を検討した。
3.T-Nは, もろみ経過中および自己消化期間中に漸次増加する。特にAlc添加後および加水後の増加量が大である。
4.寿1号および炭素による精製操作によってT.Nが減少する。
5.各Fraction-Nについては, 自己消化期間中, 高分子の含窒素成分が徐々に分解されてアミノ酸が生成される傾向が示された。
6.生成したアミノ酸の種類は, 既往の文献あるいは普通清酒と比較して差異はない。従って酵母の自己消化によって特別なアミノ酸が増加して酒質が変化する恐れはない。
以上の結果より本法による調味法が企業的に成立する可能性を確認できた。
終りに臨み終始御指導戴いた当試験場食品醗酵部長長谷川吉郎先生に謝意を表します。

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