日本釀造協會雜誌
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醪の稀薄仕込について
中野 浩
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1962 年 57 巻 11 号 p. 997-999

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抄録

醪製造の簡易化並びに歩留り向上を計る目的で, 醪の汲水歩合を延ばしたいわゆる稀薄仕込の試験を実地に行ない, 従来から行なわれている普通仕込のものと比較し, 製造行程から製品に至るまでの諸点につき検討を加え, 次の結果を得た。
1) 醪の管理操作上の利点として, 醪の品温が外気の影響を受け難い関係から, 温度管理が楽になる。また醪が転覆醗酵をする関係から, 擢入れは廃止しては何等差支えない。
2) 酒化率並びに白米清酒率は対称の普通仕込のものに比較し, 高い値を示し, 粕歩合は低い値を示した。各歩合について, その差のT検定を行なった結果, それぞれ有意差が認められた。即ち, 原料米の利用を高め得ることが出来たわけである。
3) 製品を成分的に見ると, 透過率については, 稀薄仕込のものが可成高い値を示し, 対称との間に有意差が認められたが, その他の成分については差は認められなかった。
4) 劇酒成績の結果は, 稀薄仕込の方が優れており, 検定により相互間に有意差が認められた。
以上の結果から推して, 醪の汲水歩合は, 事情の許す範囲内で大きくして行く方が, 得策であると考えられる。
本試験の実施に当り, 資料の提供を頂いた各酒造場に対し, また種々御教授を賜わりました名古屋国税局畑生鑑定官室長並びに鑑定官室の各位, 及び松野岐阜県技師に対し深謝の意を表します。

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