日本釀造協會雜誌
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昭和38年新酒鑑評会出品酒の成分について
醸造試験所
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1963 年 58 巻 12 号 p. 1121-1126

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抄録

鑑評会で優位のものの酒質はほぼそろっており, 日本酒度, (+) 2~ (+) 5, アルコール分17~18%, 酸度1.6前後, 結合酸0.8ml前後アミノ酸度1.0~1.3位のものが多い。色はほどほどでなければならないし, 鉄分は混入しないよう細心の注意が肝要である。
結合酸が評点の悪い酒に多いのはやはりもろみの経過が正常を欠いたこと (これセこは色々条件が考えられるが) を示しているように考えられ, 酸量だけを適当に調製して出品しても, 官能は微妙なものであるらしい。全糖分と直糖分の比率 (澱粉の中間分解物, デキストリンの多少) も何か酒のまるみ, ごくみ等に影響しているような結果を示したが, これは更に検討の余地があると思われる。
鑑評会出品酒のようなものは原料処理, 製造経過から「出品」迄, いわば五体そろった。しかも調和のとれたものでなければならないと感じた次第である。細心の管理 (見とおし) が必要で, 何といっても本質的に良いものを作ることが根本問題であって, 出来た酒に工作をほどこしてもそれは末梢的なことがらと思われる。
本分析は醸造試験所第4研究室で行なったものである。メンバーは村上英也室長, 秋山裕一, 大脇京子, 野田幸男, 山本友厚, 長縄真琴, 鈴木与である。

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