日本釀造協會雜誌
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酒造米に関する研究 (第5報)
米粒の組織化学的な検討
柴田 豊太郎
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1967 年 62 巻 11 号 p. 1256-1262

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抄録

早期栽培米の構造をあきらかにするため組織化学的な検討を試みた。
(1) 米粒の横断面では, CおよびF (山田錦) の放射状構造の中心点が腹側に偏する傾向がみられ縦断面でもDの背・腹両部が均衡のとれた発育・充実を示しているのに比べ, 腹部においてCは発育・充実, Fは充実良であった。
(2) 半暗視野条件で観察した結果, 米粒表皮層に特有の輝線を認めたが, その強さは腹>背, D>Cであり, Cの背部では認められなかった。
(3) 米粒のデンプンは四重の膜様物質によって被覆されていることが明らかにされた。
(4) 糊粉層についてみると, 一般にCおよびFの背部は特に厚く, 処々でデンプン細胞層に陥入した部分がみとめられた。
(5) 全標本の腹部およびDの背部の糊粉層に好酸性糖タンパク質反応が認められたが, CおよびFの背部では認められなかった。また糖タンパク質反応が認められない部分における細胞の境界は消失するかまたは不明瞭であった。
(6) 玄米および白米の化学的成分のうちC地区標品は, とくにタンパク質含量において背>腹の著しい差異を認めた。
(7) 潜在腹白米の異常吸水の一原因として, 米粒腹部が背部に比較して著しく発育・充実が劣るため, 乾燥する過程で構造的に弱い部分に亀裂を生じ, 水の侵入を容易にするためであると推論した。

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