始めに味噌があった。人は味噌造りを生業とするようになり, 長い年代を重ねた。社会の変遷, 技術の高度化と共に生産の集中が起こり企業として発展した。かくしてそこに企業があり, 味噌はこれに従属するものであるかのようになってしまった。ここにおいて品質評価の基準も大きく揺り動かされるようになった。世人はこのような変化と動揺を名づけて伝統と近代化の矛盾, 相剋などというが, 確かに味嗜企業が直面している悩みであろう。
味噌に深い愛情を傾倒してこられた著者に味噌が直面している技術と企業の問題点に触れてもらった。ここに述べられた著者の信念は味噌を業とする人々の心に強く訴えるものと思う。深く考えて本年の第一歩を踏み出したいものである。