日本釀造協會雜誌
Online ISSN : 2186-4004
Print ISSN : 0369-416X
ISSN-L : 0369-416X
酵母の生成する香気について (第9報)
酵母によるβ-フェニルエチルアルコールおよびβ-フェニルエチルアセテートの生成について
小泉 武夫角田 潔和山本 多代子鈴木 明治
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 74 巻 3 号 p. 173-178

詳細
抄録

β-フェニルエチルァルコールとβ-フェニルニチルアセテートはバラの香気に似たもので, 多くのアルコール性飲料の香気付与のために重要な化合物である。特にβ-フェニルエチルァルコールは種々のアルコール性飲料の中にかなりの量で存在している。例えば筆者らが分析した種々のアルコール性飲料中の存在量は次の様であった。清酒40~60ppm, ウイスキー10~15ppm, ビール15~20ppm, ブランデー5~6ppm, しょうちゅう30~40ppm。本報告ではこのβ-フェニルエチルアルコールとβ-フェニルエチルアセテートの酵母による生成について検討した。その結果は次のとうりである。
1.フェニルアラニンからβ-フェニルエチルアルコールの生成量には, 供試酵母間に差異があり, 清酒酵母はビール酵母, ワイン酵母よりその生成は強い。
2.清酒酵母の2, 3, 5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド還元能とβ-フェニルエチルァルコールおよびβ-フェニルエチルアセテート生成能との関連は供試酵母間に大きな差異がある。その順位は赤色コロニータイプ>赤桃色コロ論一タイプ>桃色コロニータイプ>白桃色コロニータイプであった。
3.β-フェニルェチルァルコールは, フエニルァラニンが酵母による脱炭酸, 脱アミノ反応にょって生じる。また我々の実験結果ではチロシンが酵母によって分解されるときも少量生じることを知った。

著者関連情報
© 公益財団法人 日本醸造協会
前の記事 次の記事
feedback
Top