日本釀造協會雜誌
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米粒中の脂質の存在部位と処理中の動き
吉沢 淑蓮尾 徹夫石川 雄章
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1980 年 75 巻 5 号 p. 432-435

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抄録

玄米及び精米歩合75%の白米をリパーゼ, 溶剤処理を行い, 米粒中の脂質の動きを脂肪染色後, 顕微鏡観察を行い, 同時に脂肪酸を測定し, 検鏡結果と脂肪酸の含量, 組成とを比較検討した。
1.無処理玄米では糊粉層と, これに隣接する胚乳細胞群はスダンIVにより染色される。それより内部の胚乳細胞ではセルウォールに沿った部位にスダンWで染色される脂質が存在した。
2.リパーゼ処理玄米では糊粉層のリピッドが一部胚乳細胞に浸出した。内層部のセルウォールに沿った染色はややにじみ出したような状態となった。
3.溶剤処理玄米では脱脂され難い層が外層に一層みられ, 他はほとんど染色しなかった。白米の場合には染色がほとんどみられなかった。
4.白米をリパーゼ処理後, 蒸米にしたものではセルウォールに沿った染色はみられなくなった。一方無処理蒸米ではわずかに染色した。
5.玄米をリパーゼ処理したものでは粗脂肪区分の全脂肪酸量もその脂肪酸構成割合にも大きな変化はみられず, 白米の場合には脂肪酸量は減少し, 脂肪酸組成では不飽和脂肪酸の割合が減少し, これを蒸きょうしたものでは不飽和脂肪酸の割合が著るしく減少した。
6.溶剤処理では玄米, 白米ともに脂肪酸量の低下がみられたが, 脂肪酸の構成割合では大きな差はみられなかった。

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