日本釀造協會雜誌
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廃水中の酵母溶解菌の分布
酵母溶解菌に関する研究 (第3報)
山本 奈美蓮尾 徹夫寺内 敬博斎藤 和夫蓼沼 誠
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1984 年 79 巻 11 号 p. 828-833

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抄録

食品工場の廃水, 酵母処理槽, 及び活性汚泥槽における酵母菌 (YLM) の分布を調べた。
分離されたYLMは, 通常の栄養培地で生育できるStreptomyoes属3株, Oerskovia属3株及びBacillus属4株の計10株と, YLM-1と同様通常の栄養寒天培地上でコロニーを形成しないYLM-1型菌37株であった。
通常の栄養培地で生育する菌はYLM-1型菌と異なり酵母と凝集せず, 酵母を含む寒天培地では溶菌斑を形成しても液体培養では廃水処理用実用株Hausenula anomala J45-1を溶菌しなかった。
YLM-1型菌はその溶菌斑形成能よりa, b, cの3群に分けられ, YLM-1はa群に属した。YLM-1型菌と酵母との凝集性は全てのYLM-1型菌で同一のパターンを示した。
YLM-1型菌と酵母の凝集性及び酵母の溶菌性は酵母の血清群と関連性があり, 酵母の細胞壁の構造と深い関係があるものと考えられる。
YLM-1型菌は液体培養でもHansenula anomala J45-1をよく溶菌し, 活性汚泥槽における酵母の消長と関連するものとは推定される。一方, 酵母槽におけるYLM汚染防止のためには酵母槽のpHを5.0以下に保つことが有効と思われる。
終りに, 本研究全般にわたり御指導いただいた東京大学農学部田村学造教授, 細菌の分類に関して御教示いただいた東京大学応用微生物研究所駒形和男教授, 数々の御助言をいただいた東京大学農学部山崎真狩助教授, 試料を提供して下さった各社, 終始御鞭撻いただいた当所佐藤信所長, Oerskovia citrea CK株を分譲いただいた当所熊谷知栄子主住研究員に深謝いたします。
本研究の一部は環境庁国立公害防止等試験研究費によって行われた。

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