日本釀造協會雜誌
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Rhizopus属による味噌醸造について (その1)
各種糸状菌の大豆醗酵食品への利用に関する研究 (第1報)
原山 文徳安平 仁美
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1985 年 80 巻 4 号 p. 281-286

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抄録

テンペ由来あるいは清酒で試験されたRhizopus属6株を用い, それぞれのスターター (種菌) を造り, 小型通風製麹機で蒸米による培養試験をし, 比較的プロテアーゼ活性が高く, 胞子着生の遅い, Rhizopus oryzae IFO 5418, R. japonicns IAM 6002の2株を選択した。さらにこの麹を用い, 食塩濃度を4-12%と変えた味噌仕込みをし, 以下の結果を得た。
1. スターターに含まれる胞子数, グルコサミン量はspecies間で異なった。
2. 蒸米で培養したところ, プロテアーゼ活性は酸性側が主体で, アミラーゼ活性は微弱であり, pHは4.0前後まで下がった。
3. 選択株の産生した有機酸は, 乳酸が主体であった。
4. この麹で味噌を仕込んだところ, 蛋白質溶解率は対照の黄麹菌区の70%程度になるが, アミノ酸の遊離量は極端に少なくそれの35%前後で, 糖については全区分とも60%台の遊離率であった。
5. 物性は粘りが少なくぱさぱさしやや硬かった。
6. 色は照りは少ないが, 熟成中の着色が小さいため測色Y値は黄麹菌区より遙かに高く明るかった。
7. 食塩8%以上では未熟の傾向にあったが, 4 %のものは従来の低食塩化味噌にありがちな過熱臭, 過熱味がなく味がマイルドで, 香りは味噌らしくなかった。
8. Rhizopus属を利用した味噌は, ピログルタミン酸が極めて少なかった。

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