日本釀造協會雜誌
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種々の微生物による米酢香気の変化
円谷 悦造正井 博之
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キーワード: 米酢, 香気成分, 微生物
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1986 年 81 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

醸造酢の異臭発生防止のための基礎的知見を得る目的で, 種々の微生物の作用を受けた米酢を試作し, その際の香気成分の変化を測定した。その結果以下の知見が得られた。
1) 酵母の作用: 原料処理工程中にSacharomyees sp. の作用を受けると, 矩プロピルアルコール, イソブチルアルコール, イソアミルアルコールが生成し, これらは, 酢酸発酵工程中にAcetobacter pastmrianusの作用で, 各々の一部が, プロピオン酸, イソ酪酸, イソ吉草酸に酸化され,“酵母様臭気” が発生した。
2) 乳酸薗の作用: 原料処理工程中にLatobacilluscasei subsp. caseiの作用を受けると, 乳酸が生成し, これは酢酸発酵工程中に, A. pastmriamsの作用で一部がアセトインに変換された。アセトインの極く一部は, 熟成工程中に自動酸化され, ジアセチルが生成し,“むれ香” と称される “アセトイン臭”,“ジアセチル臭”ラが発生した。
3) 好気性細菌の作用: 原料処理工程中にBacillussp.の作用を受けると, イソ酪酸, イソ吉草酸, アセトインが生成し, これらの香気成分は酢酸発酵工程後も残存し,“馬草様臭気”が発生した。
4) 嫌気性細菌の化作用: 原料処理工程中にClostridiumsp. の作用を受けると, 酪酸が生成し, これは酢酸発酵工程後も残存し,“酪醸臭”が発生した。
5) 不良酢酸菌の化作用: 熟成工程中にAxylinumの作用を受けると, エチルアルコール, 酢酸, 酢酸エチル, アセトアルデヒドの減少とともに, イソ酪酸, イソ吉草酸, プロピオン酸が生成し,“過酸化臭”が発生した。これらの微生物の作用を抑制することにより, 食酢の異臭発生の防止が可能となるものと思われる。

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