熱傷
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症例
親子間同種皮膚移植と自家培養表皮移植の併用:小児に生じた熱傷後瘢痕拘縮治療の1例
能登 まり子今井 啓介矢永 博子
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2020 年 46 巻 3 号 p. 109-114

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抄録

 症例は6歳, 男児. 4歳時熱湯の風呂に転落し, 腰部から下肢にかけて深達性Ⅱ度熱傷 (DDB) ~Ⅲ度熱傷 (DB) を受傷した. 前医にて保存的加療ののち, 拘縮が高度であった左膝部に右臀部からの自家遊離分層植皮術を受けた. 膝部の機能は改善されたが, 採皮部は著明な肥厚性瘢痕を残した. 当院初診時, 腰部から大腿部にかけて痛みを伴う瘢痕のため, 座位をとることにも不自由であった. 前回手術時の採皮部に著明な肥厚性瘢痕と拘縮を認めたため, 新たに分層採皮を行うことを患者自身と家族が拒否した. このため, 倫理委員会承認のもと, 母親からの同種皮膚移植と自家培養表皮移植の併用を行った.
 瘢痕を切除して拘縮を解除し, 生じた皮膚全層欠損部に対して, 患者の母親の下腹部から皮膚移植を施行した. 同種移植施行後16日目, 自家培養表皮を移植した. 術後3年を経過したが拘縮は認めず, 整容的に問題となるような陥凹も認めていない. 母親からの同種皮膚移植と自家培養表皮移植の併用は有用と考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本熱傷学会
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