熱傷
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症例
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を合併し,ベッドサイドでの頻回の植皮を行い救命しえた高齢者広範囲熱傷の1例
権東 容秀吉澤 直樹佐野 秀史新井 隆男菅又 章
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2021 年 47 巻 3 号 p. 95-100

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抄録

 ヘパリン起因性血小板減少症 (以下HIT) を合併し, 頻回のベッドサイドでの小範囲植皮 (bed side graft : 以下BSG) を併用して救命した高齢者広範囲熱傷の1例を経験した. 78歳, 男性. 自宅で息子が焼身自殺を図り, 消火にあたった際に着衣に着火し受傷した. 初診時, 頭頸部, 体幹, 両上肢, 左下肢にⅡ度22.5%, Ⅲ度20%の熱傷を認めた. 入院後に血小板数が低下し, 5日目から回復したが9日目に4万/ µl となり, HITを疑いへパリンロックの使用を中止した. その後, HIT抗体が陽性となり, 大腿静脈に血栓を認め, アルガトロバンの投与を開始した. 安静度の制限のために, BSGを施行しながら関節可動域維持のリハビリテーションを継続した. 第77病日に血栓の消失を認め, 安静度の制限を解除した. 5回のBSGと1回の全身麻酔下での植皮で受傷後153日目に創面は閉鎖した. その後, リハビリテーションと顔面の瘢痕拘縮形成術を行い, 第250病日に転院となった.

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© 2021 一般社団法人 日本熱傷学会
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