11 巻 (2010) p. 62-69
ペンタセンを用いた塗布型有機半導体素子の作成法として、可溶性のペンタセン前駆体を塗布し逆Diels-Alder反応によりペンタセン骨格から脱離基を脱離させペンタセン薄膜へ転換する方法が提案されている。脱離基を変えた多くの前駆体に対して実験が行われ、それぞれペンタセンへの転換温度が異なることが示された。この転換温度と脱離基構造の関係を明らかにするため、報告されている6つの前駆体からペンタセンが生成する反応の解析を行った。その結果、活性化エネルギーEaが低い前駆体ほど転換温度が低い傾向にあることが明らかとなった。また重回帰解析を用いた検討により脱離基の最低非占有軌道(LUMO)と反応熱ΔEが低いほどEaが低いと計算された。次に、塗布成膜時に残存した溶媒の影響を調べるため、水素結合が形成される位置にメタノール分子を配置して、反応解析を行ったところ、Eaが気相中と比べわずかではあるが(最大で0.7 kcal mol-1)低下することが判明した。これは、前駆体の脱離基設計に加え展開溶媒として用いた分子の寄与を考慮することで、より転換温度の低い成膜プロセスが提案できる可能性を示している。