Journal of Computer Aided Chemistry
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<ファクトデータベース・フリーウェア特集号> 一括学習型自己組織化マップ(BL-SOM)を利用したメタボロームおよびトランスクリプトームデータの統合解析
矢野 美弦金谷 重彦Md. Altaf-Ul-Amin黒川 顕平井 優美斉藤 和季
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2006 年 7 巻 p. 125-136

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抄録

本論文の目的は、我々が開発した一括学習型自己組織化マップ(BL-SOM)のソフトウエアを活用することにより植物科学の分野で得られるポストゲノム科学の多変量データから生物学的に有用な知見を効率よく抽出できることを例証することである。BL-SOMは典型的なSOMを特に分子生物学の分野におけるデータ解析に向けて改変したものであり、学習の結果がデータの入力順に依存しないという特性を持っているため結果の再現性が保証されている。我々はこの解析ツールをフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分析装置(FT-ICRMS)による代謝物蓄積量の網羅的測定(メタボローム)とマイクロアレイによる遺伝子発現解析(トランスクリプトーム)を行うポストゲノム的手法による植物の栄養ストレス応答に関する研究に応用した。メタボロームデータの解析では、まずBL-SOMの可視化機能により植物の栄養ストレス応答の全体像をメタボリックフィンガープリンティングとして直感的に把握できる様式で示すことができ、植物が栽培条件や組織に依存して代謝物蓄積量プロファイルを大きく変化させていることを明らかにした。また、BL-SOMのもうひとつの特性である優れたクラスタリング機能を利用して、精密質量数から生物学的にも合理的と考えられる化合物名を推定することができ、欠乏させた元素を含む重要な二次代謝物の蓄積量が経時的に大きく変化することを明らかにした。トランスクリプトームデータの解析においては、適切な時系列データをBL-SOMで解析することにより、その機能が塩基配列からの推定にとどまっている遺伝子の機能を複数の代謝経路において同時に効率よく包括的に予測する方法を確立した。さらにこの方法によって予測した遺伝子の機能のいくつかを酵素学的方法によって確認することができた。BL-SOMはポストゲノムにおけるomics科学の分野で大量に得られる異なった種類のデータを統合して解析する際にも極めて有用な知識抽出のためのツールとなる可能性を示した。本ソフトウエアは以下のサイトにおいて無償でダウンロードできる(http://prime.psc.riken.jp)

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© 2006 日本化学会
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