Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
ISSN-L : 1345-8647
独立成分分析と遺伝的アルゴリズムを用いた新規回帰分析手法の開発
金子 弘昌荒川 正幹船津 公人
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2007 年 8 巻 p. 41-49

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抄録

本論文では、独立成分分析(ICA)を応用した新たな回帰分析手法を提案し、シンプルで予測精度の高いモデルの構築を目指す。本手法は、前処理として説明変数にICAを適用し独立成分を得た後、PLSにより独立成分と目的変数の間で回帰モデルを構築する手法である。この手法をICA-PLSと呼ぶ。さらに、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いてQ2値が最大になるように独立成分を選択し回帰する手法(ICA-GAPLS)を提案する。ICAは、信号処理の分野などで用いられる手法である。複数の音声信号が混合された信号を、複数のセンサーで観測する状況でICAを適用することにより、混合される前の音声信号を精度良く復元することが可能となる。つまりICAとは、複数の説明変数を統計的に独立な成分に分解する手法である。このICAをPLSの前処理として用いることで、PLSと比較して予測精度が向上することがサンプルデータによって確認された。本手法の適用例として、1023個の化合物に関する水溶解度データの解析を行った。PLS、GAPLS、ICA-PLS、ICA-GAPLSを用いてモデルを構築し、それらのモデルの予測性を比較した。PLS、ICA-PLSはともに最適成分数が2であり、それぞれQ2値は0.821、0.854であった。Rpred2値はPLSで0.790、ICA-PLSで0.881となり、前処理としてICAを用いることにより、予測精度の向上が見られた。さらにICA-GAPLSによって得られたモデルの最適成分数は2であり、Rpred2値は0.889であった。ICA-PLSと比較して、より少ない数の独立成分で同程度の予測精度を持つモデルが構築された。

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© 2007 日本化学会
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