発達早期の睡眠は心身の成長発達に不可欠であるが,本邦は乳児から成人まで世界有数の短時間睡眠で知られ,睡眠リテラシーの普及が課題となってきた.子どもの睡眠習慣には多様な要因が関連する上,改善には養育者の行動変容とその継続を要するため,一朝一夕での解決は困難といえる.
こうした課題に対し,大阪大学大学院連合小児発達学研究科谷池研究室では,2014年から双方向性睡眠啓発アプリ「ねんねナビⓇ」を開発し社会実装を行ってきた.ねんねナビⓇでは,小児睡眠医療のエビデンスと行動療法をベースに,各家庭が入力した生活実態に応じてスモールステップな目標となるよう調節したアドバイスを複数送信し,その内1つを養育者が選んで実行することを月に一度のペースで繰り返すシステムを採用し,主体的かつ段階的な養育行動の変容を通して子どもの睡眠習慣改善を目指す.双方向的な情報のやりとりを繰り返すデザインと,養育者のエンパワメントに特化する点が特徴である.本稿では,ねんねナビⓇ開発の経緯やシステムの詳細,社会実装の結果とともに,介入事例を紹介する.