Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
Study of the Eutectoid Mechanism of Composite Plating of TiO2
Natsuki MIYAITakakuni SHIMAZAKINozomu UCHIDA
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2015 Volume 14 Issue 3 Pages 88-89

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Abstract

Composite plating of TiO2 nanoparticle with electrolessly plated nickel films was developed by Matsubara. Although, it is assumed that the eutectoid mechanism is divided into four steps of adsorption, it is not elucidated. So elucidating the eutectoid mechanism at the molecular level provides valuable information about not only this composite plating but also other type of plating. It should be noted that TiO2 surface charge is changed by pH of plating bath. As we conduct a study on the interaction of TiO2 with reactant, it is important to consider the TiO2 surface state i.e., TiO2 surface charge. In this study, we aim to reveal the eutectoid mechanism at molecular level and the influence of TiO2 surface charge in eutectoid by using molecular orbital calculation. For theoretical chemical calculations, we used the publicly available semi-empirical calculation software MOPAC2012. The Hamiltonian PM7 to be used for molecular orbital calculation semi-empirical. We used the citric acid as organic acid, and Ti2O2 is adopted as TiO2.The result shows that the adsorption energy (ΔEad) under acidic condition has lowest value within last step of the eutectoid.

1 はじめに

本学の松原等(長岡技術科学大学)は,無電解ニッケル皮膜中にチタニアを分散共析させた複合めっき膜を開発し,その共析機構を提案している.その機構は4つの吸着段階を経て共析が完了すると考えられているが,それら吸着状態については分子レベルでの解明には至っていない.チタニア粒子の共析メカニズムを分子レベルで解明することは,その複合めっき膜の材料開発の自由度を向上させるためのみならず,様々なナノ粒子の共析機構に有益な情報を与えるだろう.

現在提案されている機構では,チタニア粒子表面と有機酸Ni錯体との親和性と,チタニア粒子と有機Ni錯体の金属錯体とNiめっき膜表面との親和性が重要視されている.ここで注目すべきは,めっき浴のpHによってチタニア粒子の表面電荷が変化する [1,2,3]ことである.チタニアと反応物質との相互作用の検討を進める際には,チタニアの表面状態,すなわち表面電荷が重要である.

そこで本研究では,分子軌道法を用いて分子レベルでの共析機構と,めっき浴条件を変化させた際のチタニアの表面電荷の変化が共析に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.

2 方法

チタニア粒子表面と有機酸Ni錯体の吸着反応と,チタニア粒子と有機Ni錯体の金属錯体とNiめっき膜表面の吸着反応における吸着機構の解析を行うとともに,チタニアの表面電荷による影響についても検討を行った.今回有機酸として,先行研究で実験においても,計算においても最も共析が進みやすいという結果が得られているクエン酸を用いた.本研究では以下の3種の系について計算を行った.

(1) チタニア表面上のクエン酸Ni錯体の吸着構造及び機構

(2) Niめっき表面上のクエン酸Ni錯体吸着チタニアの吸着及び機構 (Figure 1)

Figure 1.

 The model of TiO2 adsorped citric acid Ni complex placed on Ni. (gray: Ti, red: O, yellow: H, light green:Ni, dark green: C)

(3) 共析に最適な酸化チタン表面

クエン酸とNi錯体の吸着状態を特定するために,酸性(金属表面が正に帯電),中性,塩基性(金属表面が負に帯電)のチタニアモデルと,各溶媒条件に対応するクエン酸モデルを作成し,構造最適化を行った後,吸着エネルギーを算出し,クエン酸Ni錯体の安定性を解析した.また,Niめっき表面はNi8クラスター [4],チタニア粒子表面はTi2O2を基本構造として採用した.Figure 1にNiめっき表面上へのクエン酸Ni錯体吸着チタニアの吸着モデルを示す.

解析にはハミルトニアンPM7 を用いた半経験的分子軌道法を使用し,MOPAC2012 [5]を用いて計算を行った.また,めっき浴中での分子構造に及ぼす溶媒効果を表現するために,連続媒体モデルである COSMO 法 [6]を用いた.得られた計算結果について実験結果と比較検討を行った.

3 結果

(1) チタニア表面へのNi錯体反応は配位子置換反応によるものであり,Ni錯体は配位結合によってチタニア表面の酸素原子と結合していることが分かった.

(2) クエン酸Ni錯体吸着チタニアのNiめっき表面への吸着に関しては,クエン酸由来の酸素原子がドナーとして働き,電荷移動相互作用があることが分かった.

(3) チタニア-Ni錯体吸着過程において,どのようなめっき浴条件においても反応は自発的に進行することがわかった.

クエン酸Ni錯体形成過程においては,中性のめっき浴条件では反応が進みにくい,という結果が得られた.先行研究では,2:1のクエン酸Ni錯体は反応しないことが推察されているが,今回各めっき浴条件について計算を行った結果,中性のめっき浴条件では2:1クエン酸Ni錯体を形成しやすいということが分かった.従って,中性条件では反応は進行しにくいと考えられる.

さらにNiめっき表面上へのクエン酸Ni錯体吸着チタニアの吸着エネルギーについては,めっき浴が酸性の場合には-885 kJ/molと負に大きな吸着エネルギー値を持ち,一方チタニア表面が中性では380 kJ/mol,塩基性では433 kJ/molと酸性条件以外では正の値となった.従って,共析の最終段階であるNiめっき表面上へのクエン酸Ni錯体吸着チタニアの吸着過程では,酸性条件下での酸化チタン表面が共析に最適だということが考えられる.また,実際の実験においてもめっき浴が酸性の場合が最も共析量が高くなるという結果を示した.この結果から,本研究ではこの種のめっきでは酸性条件のめっき浴を使用することを推奨する.

参考文献
 
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