Journal of Computer Chemistry, Japan
Online ISSN : 1347-3824
Print ISSN : 1347-1767
ISSN-L : 1347-1767
速報
2–アザスピロ環化合物における閉環反応の理論的研究
寺前 裕之須田 岬湯川 満林 浩輔高山 淳坂本 武史
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2016 年 14 巻 6 号 p. 213-214

詳細
Abstract

The geometric structures of the phenoxenium cation which is a cation intermediate of 2-azaspiro ring compounds (2-azaspiro[4.5]decane) from N-methoxy-N-prenylbenzamide are studied by means of the Hamiltonian algorithm with ab intio molecular orbital calculations at HF/3-21G level. The geometries are further refined with MP2/6-311G** level. We tried four substituted compounds with the methyl group. Among them only one compound with two methyl groups gives a ring-closure intermediate, which agrees well with the experimental results.

1 はじめに

近年,生理活性を有する2-アザスピロ環化合物が数多く発見されている.ナイトレニウムイオンを用いた1-アザスピロ環化合物の合成例は多数報告されているが [1],フェノール類の脱芳香型酸化反応を利用した2-アザスピロ環合成の報告例は少ない.我々は,超原子価ヨウ素化合物を用いるベンズアニリド誘導体の酸化的脱芳香化反応によって,2-アザスピロ環の合成を行ってきた [2].

また,N-メトキシベンズアミドの窒素にプレニル基を導入した化合物1a を出発物質として同様の環化反応を検討しており,今回はこの環化反応を理論的に取り扱う.

Table 1に示すように,アリル基上の置換基R1,R2がMe基であるN-プレニル置換化合物1aを出発物質とした場合に2-アザスピロ[4.5]デカン体3が得られるが,他の場合には対応するスピロ環化体は得られない [2].しかしながら,このような置換基の違いがどのように環化反応に影響を及ぼしているのかは不明である.

Table 1.  Aromatic oxidative cyclization of N-methoxy-benzamides using PhI (OCOCF3)2

そこで本研究では,Table 1に示すN-アリル-N-メトキシベンズアミド類(1a-d)の脱芳香型酸化反応のカチオン中間体であるPhenoxenium cationに着目し,高次元アルゴリズムを用いた分子軌道計算により,置換基効果を検討した.

2 計算方法

汎用分子軌道計算プログラムGaussian09 [3]およびGAMESS [4]を使用し,高次元アルゴリズムで得られたHF/3-21Gレベルの最適化構造を基にしてさらにHF/6-311G**,MP2/6-311G**レベルでの構造最適化を行った.高次元アルゴリズムの部分のプログラムはオリジナルコードでGAMESSプログラムと組み合わせて使用した.

高次元アルゴリズムは一般的な最適化手法で,分子構造の最適化に応用した場合には擬似的な分子動力学法を用いた最適化手法となる [5].高次元アルゴリズムによる最適化の手順としては,まず化学式から分子力場法などを用いて適当な初期座標を作成しておき,それを元に20000回程度の非経験的繰り返し計算を行って,100回毎に構造をスナップショットとして取り出し,その構造からさらに分子構造最適化をGaussian09などを用いて行う.繰り返し計算が20000回であれば重複を含めて200個の構造が得られることになる.

3 結果と考察

高次元アルゴリズムによる構造最適化を行ったところ,スピロ環化体3が得られるR1,R2がMe基,R3がHであるN-プレニル体1aのカチオン中間体であるPhenoxenium cation 2aの異性体では,Figure 1に示したようにスピロ[4.5]環構造である閉環構造を最安定構造として持ち,MP2/6-311G**での全エネルギーは-783.021045 a.u. であった.さらにそれ以外にも4員環構造を持つスピロ[3.5]環構造も局所安定構造を持つが,全エネルギーは-783.000158 a.u. となり,スピロ[4.5]環構造と比べると高く不安定なことがわかる.Phenoxenium cationはさらに不安定で全エネルギーは-782.996317 a.u.である.

Figure 1.

 Optimized structures with R1=R2=Me and R3=H.

R1~R3がHである1bのPhenoxenium cation 2bの異性体では,スピロ[4.5]環構造を安定構造として持たず,4員環構造を持つスピロ[3.5]環構造が局所安定構造として得られたが,その他にはPhenoxenium cation 2bのみが得られた.それぞれのMP2エネルギーは-704.595868 a.u. および-704.593102 a.u.である.

R3にMe基が置換したPhenoxenium cation 2cでは,スピロ[4.5]環構造を持つ中間体は得られなかったが,4員環構造を持つスピロ[3.5]環構造と6員環構造を持つスピロ[5.5]環構造を持つ中間体が局所安定構造として得られた.それぞれのMP2エネルギーは-743.811710 a.u. および-743.833569 a.u. であった.最安定構造はトリシクロ環構造でMP2エネルギーは-743.849178 a.u. であった.

R2にのみMe基を置換したPhenoxenium cation 2dでは,5員環を持つスピロ[4.5]環構造およびスピロ環が一部壊れた構造が局所安定構造として得られたが,最安定構造は2cと同じくトリシクロ環構造であった.それぞれのMP2エネルギーは-743.811145 a.u., -743.808936 a.u.,-743.829188 a.u. であった.

以上のようにカチオン中間体の最安定構造がスピロ[4.5]環構造を持つPhenoxenium cationのみから環化体生成物が得られることがわかった.

参考文献
 
© 2016 日本コンピュータ化学会
feedback
Top