Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
The Effect of the Anions in the Crystal on the Structure of [Mg(DMF)6]2+
Hiroshi SAKIYAMAMisaki ITORyoji MITSUHASHIMasahiro MIKURIYA
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2016 Volume 15 Issue 3 Pages 49-50

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Abstract

In a crystal, an octahedral magnesium(II) complex cation, [Mg(DMF)6]2+ (DMF: N,N-dimethylformamide), was found to exist as a C2 conformer, which was thought to be energetically unfavorable. In order to find the reason for this, structural analysis was conducted on the basis of semi-empirical PM6 method and density functional theory method. The C2 conformer was not found to be stable in a vacuum; however, it was found to be stabilized when surrounded by four tetraphenyl borate anions like the crystal structure.

1 背景と目的

金属錯体の磁気異方性は金属周りの構造と深い関係がある.例えば,[Co(DMF)6]2+錯カチオン(DMF: N,N-ジメチルホルムアミド)は正八面体からの歪みに起因する大きな磁気異方性(伸びた三回軸方向に磁化容易軸)を持っている [1].そこで金属周りの構造を制御できれば,磁気異方性をも制御できると期待できる.

一般に正八面体型錯カチオン[M(DMF)6]2+(M: 金属イオン) はS6対称の配座異性体が安定であり [2],多くの結晶中で疑S6対称の構造が見いだされている [3].しかしマグネシウム誘導体[Mg(DMF)6]2+(Figure 1)の結晶中の構造を調べると,安定ではないと考えられるC2対称の構造が優勢であることが分かった [4].本研究ではこの理由を解明することを目的として陰イオンに取り囲まれた[Mg(DMF)6]2+ の構造最適化計算をおこない,結晶構造の特徴が再現されることを見いだした.

Figure 1.

 Chemical structure and crystal structure of[Mg(DMF)6]2+ complex cation.

2 方法

計算に用いる錯体の初期構造はWinmostar [5] で作成した.半経験的方法(PM6)による構造最適化にはMOPAC2012を用いた [6].密度汎関数法(LC-BOP/6-31G [7])による構造最適化にはGAMESS [8,9]を用い,九州大学のFUJITSU PRIMERGY CX400 (TATARA)上でおこなった.

3 結果と考察

まず[Mg(DMF)6]2+の配座解析を実施したところ,最安定構造はS6対称の配座異性体(Figure 2)であることが確認できた.また結晶中で見いだされたC2対称の配座異性体は安定でないことも示された.

Figure 2.

 Computed structures for [Mg(DMF)6]2+ (LC-BOP/6-31G*).

そこで次に C2対称の配座異性体が結晶中と同様に四つのテトラフェニルホウ酸イオン(BPh4)で囲まれた[Mg(DMF)6](BPh4)42–について半経験的PM6法と密度汎関数理論(DFT)法によって構造最適化を実施した.結晶中でマグネシウムイオン周りの配位構造は複雑にひずんでいるが,PM6計算では,ひずみの度合いは異なるものの,結晶構造のひずみのパターンが再現されていた.DFT計算においても基本的なひずみが再現され(Figure 3),BPh4イオンで囲まれることによってC2対称の配座異性体が安定化されることが分かった.

Figure 3.

 Crystal structure (left) and computed structure (LC-BOP/6-31G) (right) for [Mg(DMF)6](BPh4)42–.

今回の計算で,本来不安定であるはずの配座異性体が陰イオンに取り囲まれることで安定化されていることが分かった.実験で得られた構造と比較すると,今回の計算では配位子間水素結合が過大評価される傾向が見られたが,今後,特に配位子間水素結合を適正に考慮できれば[Mg(DMF)6](BPh4)42–の構造がよく再現でき,更には結晶構造の予測も可能になると期待できる.

Acknowledgment

本研究はJSPS科研費15K05445の助成および山形大学の運営交付金によっておこなわれた.TATARAの利用では,九州大学の稲富雄一博士にお世話になった.

References
 
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