Journal of Computer Chemistry, Japan
Online ISSN : 1347-3824
Print ISSN : 1347-1767
ISSN-L : 1347-1767
研究論文
酢酸-リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合における核の量子揺らぎの効果に関する理論的研究
川島 雪生澤田 啓介中嶋 隆人立川 仁典
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2016 年 15 巻 5 号 p. 203-209

詳細
抄録

High Performance Computerで効率の高いシミュレーションを実行できる,分子科学計算ソフトウェアNTChemと経路積分分子動力学(PIMD)法を統合した階層的並列プログラムプラットフォームを用いることにより,低障壁水素結合(LBHB)の存在が示唆されているperiplasmic phosphate binding protein (PPBP)のモデル分子である酢酸-リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合における原子核の量子揺らぎの効果を明らかにした.モデル分子における一つの水素結合を形成する配置を解析したところ,原子核を古典的な質点で取り扱った古典シミュレーションでは,プロトンは水素結合の両端に局在化し,通常の水素結合と同様の振る舞いを示した.一方,原子核の量子揺らぎの効果を取り込んだ量子シミュレーションでは,プロトンが水素結合の中央に存在する確率が高くなった.酢酸-リン酸アニオンクラスターの分子間水素結合は,LBHBと同じような傾向を示した.

Fullsize Image
著者関連情報
© 2016 日本コンピュータ化学会
前の記事
feedback
Top