Journal of Computer Chemistry, Japan
Online ISSN : 1347-3824
Print ISSN : 1347-1767
ISSN-L : 1347-1767
Letters (Selected Paper)
The friction of rolling wheel-Driving and braking processes-
Yuhei NATSUME
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2016 Volume 15 Issue 6 Pages 225-226

Details
Abstract

The mechanism of rolling frictions of wheel is discussed in relation with movement of Reuleaux-pentagons. In fact, driving and braking processes lead us to the suggestion that hysteresis-energy loss model is naturally obtained. In addition to this, the combined model of hysteresis-energy loss and differential-slip mechanisms is proposed so as to promote the computational investigations for rolling frictions of wheel.

1 序

円柱の面上の転がりについては,面と面との静止摩擦・動摩擦に比較して,未解決の課題が多く残されている.分野によるアプローチの違いにも直面する.そのあたり,本研究会での,研究への取り組みに期待して,一つの提案をする[1].

2 Reuleauxの五形柱の転がり

まず,充分に勢いのある,丸みを持った多角形の柱体が転がっている状態を考える.Figure 1を見てほしい.平面との接点を矢印で示してある.ある瞬間,(1)のように,A角とB角を両端に持つ面(曲線)の中点が地面に接しているとする.すると(2)のように,慣性で後ろのA角が持ち上がり,前のB角は下がるであろう.すると,重心が持ち上がって前に移動していく.この際,接点が滑らないとしたら,静止摩擦力が後方(左向き)に働いていることになる.これは進行方向とは逆なので,制動過程である.接点に働いている抗力はこの五角形の中心の前方を通っているため,この抗力は五角形の回転とは反対向きの力のモーメントを与える.

Figure 1.

 The analysis of step-changes in rolling movement of Reuleaux-pentagons is shown.

さて(3)になると,重心は最高点に達する.その後は(4)のように,重心が下がってくるが,その際は接点では摩擦力が前方(右向き)に働いている.そうしないと滑ってしまう.摩擦力が進行方向に働いているので駆動過程といえる.接点に働いている抗力はこの五角形の中心の後方を通っているため,この抗力は五角形の回転の向きの力のモーメントを与える.やがて,(5)に示すように,次の角(C角)が下りてくる.つまり,(1)同じ状況になる.すなわち,重心上昇時には制動,重心下降時には駆動とみなせる.

3 もっと多角形にしていくと円になるが

この丸みのある五角形を7角形,9角形と,細かく(つまり,滑らかに)していくと,もはや,重心の上昇下降はゼロに近づき,接点での「制動」「駆動」の区別も判然としなくなってくる.それが円(円柱)である.この場合は複数の過程のつながりではなく「滑らかな転がり」という角のない円特有の現象である.

実際,いろんな説明モデルが考えられるが,ここでは,円の微小な変形を考える.Figure 2の円の右半分に描いたように,転がっている円柱は,赤い斑点模様のように前の方に圧縮されて,地面との接点が前方にずれている.これはFigure 1の(2)に対応している.そのため,ここに立てた垂線が円の中心より前を通り,力のモーメントが円の転がりを弱めてしまう.

Figure 2.

 Driving and braking processes in rolling of wheel are schematically illustrated. The hysteresis energy loss model is suggested for the rolling frictions.

しかし,円は回転しているので,この圧縮された部分は,円の後方に回った時に,紫色斑点模様のように,接点を後方にずらしつつ復元力を働かせる.その力のモーメントは左半分の緑色矢印のように円の回転を強めるように働く.Figure 1の(4)に対応している.

ところがここで,摩擦のある系が持つ「宿命」がある.円の前半分で受けた圧縮に対して復元は不完全になっている.「力学エネルギー」から,その多くの部分が,熱(のエネルギー)に必ず変わってしまう.このヒステリシス損失[2]のため,Figure 2の右半分の下部において,弾性エネルギーとして蓄えたものに比べて,この部分が車の後方に回った際に復元力になって円を駆動する働きは小さいのである.

4 駆動とは何をしているのか?

さて,駆動の問題である.もちろん,外部の「駆動源」がエネルギーを与えているのである.しかし接点の状況で考えると,Figure 2の左半分の上部に追加して茶色矢印のように,「駆動」によって垂直抗力による力のモーメントを強めているわけである.この状況を「摩擦力が仕事をした」という表現は自然である.では,外部の「駆動源」は何だったのだろう.それは,そのようにうまく外力である摩擦力が駆動効果を強める状況づくりに使われたとも言える.

5 他の理論モデルとの関係

ころがり摩擦については,このヒステリシス損失説の他に,差動滑り説[2]がある.特に球の場合,接触部の中心円のすぐ近く(両端)に半径の小さい円があることになるので,接触部で回転から遅れてしまうために生じる摩擦の他に,両端部分に中央部とは逆方向のすべり域が存在するという説である.この差動滑りによる球の変形については実際の観測例もある.ここで考えている円柱の場合も,接触円が中心円とその周囲の円で役割分担して,円の回転から遅れてしまう摩擦と回転についていく摩擦の2種があることが予想される.

実際は,Figure 3に表したように,ここで主として述べたヒステリシス損失の機構,即ち,接点の前後での時間的差による役割分担である「圧縮」と「緩和」に加えて,このような空間的な役割分担が同時に起こっていると思われる.そこで,本論文で,ヒステリシス損失・差動滑り複合説を提案したい.

Figure 3.

 The combined model of hysteresis-energy loss and differential-slip mechanisms is proposed for rolling friction here. The pattern of distribution of stress is shown schematically.

6 「まとめ」に替えて,シミュレーション研究の提案

以上,このテーマを粒子集団系の動力学シミュレーションで見れば,我々の転がりに関する理解は,分野の壁,説分類の壁を越えて,進むことになると考えている.

References
  • [1]   Y. Natsume, Rika no Tanken, 22, 52 (2016).
  • [2]   J. Okamoto, K. Nakayama, M. Sato, Toraiboroji Nyumon; Masatu-Mamo-Junkatsu no Kiso, Sachi Syobo (1990).
 
© 2017 Society of Computer Chemistry, Japan
feedback
Top