Journal of Computer Chemistry, Japan
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追悼寄稿
下沢隆先生を偲んで
吉村 忠与志
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2017 年 16 巻 1 号 p. A8

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教員人生が半世紀,定年退職しても生涯現役を続けたいと模索している今日,下沢隆先生のご教示とインドネシアに招待していただいたことがきっかけで,“バンドン会議” に参加させていただき,先生のご逝去に伴うお別れ会に参列することができた,まことに嬉しく思っている.

先生との出会いがあってこそ,本学会,日本コンピュータ化学会が存在する.本学会の誕生秘話を述べて,先生を偲ぶことにする.

1982年に私の個人的な企画で,「化学PC研究会」を立ち上げて,400名程度で学術活動を開始した.時田澄男先生のご助力で1987年に埼玉大学で研究発表討論会を開催していただき,下沢先生に研究会会長をお願いして以来,お付き合いをしていただいてきた.化学教育の分野で“コンピュータ利用の教育” を模索していた私にいろいろとご助言をくださり,ご指導をいただいた.先生との楽しかった仕事のうちで,1985年に日本で開催された化学教育国際会議(ICCE)に続き,1989年にカナダのウォータールで開催された会議の下沢先生ツアーに夫婦で参加したことである.化学教育の勉強会議なのに,ナイヤガラの滝やUCバークレー校などを見学し,愉しい旅を経験した.これに肖り,ICCEにはその後の会議に継続して参加した.

1991年には10カ月の在外研究の機会を得て,下沢先生の企画コースを回り,ロンドン大学(イギリス),モンクトン大学(カナダ),ウィスコンシン大学(USA),テキサス大学(USA)を客員として訪問することができました.ウィスコンシン大学では,ムーア(John W. Moore)教授から化学教育ソフトウェア(SERAPHIM disks, 83件)を無償供与され,日本国内で無償配布することができた.

1992年には,下沢先生指導の下,学術団体「化学ソフトウェア学会」として日本学術会議に登録し,本格的な学会活動を推進することができた.その活動の一つとして,学術雑誌“Journal of Chemical Software” の英文チェックには下沢先生の朋友ニューボルト(Brian Newbold)先生が担当してくれ,現在の学会ジャーナル“Journal of Computer Chemistry, Japan” も引き続き,元気に担当してくれている.有り難いことである.

下沢先生には発足当初から学会の会長を務めていただき,埼玉大学教授の定年退官を機に細矢治夫先生に交代していただいた.先生の定年後は,JAICA派遣でインドネシアにおける工学教育の発展に寄与される中で,科学教育学会長だった木村捨雄先生とインドネシアに下沢先生を訪ね,ジョクジャカルタをはじめ,いろいろな所に連れて行ってもらい,愉しいひとときを過ごすことができた.

“化学とコンピュータ” というキーワードで学術活動できたのも,ひとえに下沢先生のご鞭撻の賜物と感謝している.下沢先生との思い出はすべてが楽しく,私のドライビングフォースとなっている.先生との思い出を語ることで感謝の意を表す.有難うございました.

 
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