Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
Theoretical Analysis for Regioselective Reaction of Fullerenes
Naohiko IKUMA
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2017 Volume 16 Issue 5 Pages 131-132

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Abstract

Organic reactions with fullerene realize functional nanomaterials, although selective functionalization is still challenging because of many equivalent olefins causing various regioisomers. Thus, the improvement of reactivity and regioselectivity of C60 reaction has been realized by structural organic chemistry such as enhancement of strain, introduction of heteroatom, and nucleophilic additoin via single eletron transfer (Figure 1

Figure 1.

 Concept of the activation of C60 to obtain regioselective adducts.

). This paper presents the theoretical clarification for the reactivity and selectivity of these activated reaction conditions.

1 はじめに

フラーレンC60は様々な置換基導入反応によりその電子特性や溶解性を変化できるが, 等価な二重結合が30あるため, 付加数および付加位置を制御した反応は限られていた. 本研究では構造有機化学的手法に基づいたフラーレンの活性化と位置選択性の向上を試みてきた(Figure 1). 具体的には, 1)炭素架橋導入による橋頭二重結合のひずみの増大による反応性向上, 2)窒素原子導入によるambident求核性の付与による酸触媒あるいは金属試薬付加反応の開発, および3)エナミン•ジエナミンなどの求核剤の熱電子移動反応を用いた一付加体の高収率合成を行った. これらの合成法を用いて分子の溶媒溶解性や電子準位を精密に制御できるので、太陽電池などの電子材料への展開が可能である. その一方で, これらの反応は条件によって選択性や反応点が変化したり, 意図しない転位反応が起こる場合があり, 材料を効率的に得るためには詳細な反応機構の解明と最適反応条件の予測が必須である. 本稿では, これらの反応の位置選択性について計算化学的手法により評価し, 置換基や付加基による選択性の変化や転位反応機構の解明について報告する.

Figure 1.

 Concept of the activation of C60 to obtain regioselective adducts.

2 方法

1)については, メチレン架橋を有するフラーレン誘導体(フレロイド) [1]に対し遷移状態計算を全ての二重結合に対して行い, その活性化エネルギーから位置選択性を評価した. また, Activation/strain model (ASM) [2]により, ねじれた二重結合の反応特性の解明を試みた. 2)については, 窒素架橋を導入したアザフレロイド [3]について, 酸の反応点を明らかにするためにプロトンを窒素上, あるいは共役する炭素上に付加させ, 酸親和性を計算した. 3)については, エナミン/ジエナミンの軌道準位をDFT計算により求め, 既知の求核剤と比較した. さらに, 実際の反応を試みたところ水素転位反応が起こったので, その機構を中間体のスピン分布と遷移状態計算から解析した. 計算はGaussian 09を使用した.

3 結果と考察

1) 架橋歪みの選択性向上への寄与: フレロイドのDiels–Alder反応において, メチレンに隣接する橋頭二重結合(olefin-1)で14 kJ/molの活性化エネルギーの低下が得られ, 歪んだ二重結合の反応性の高さが示された(Figure 2). この高い反応性は, ジエンの非対称的な接近に伴う大きな相互作用エネルギーに起因することがASM解析から推定された [4].

Figure 2.

ΔE of Diels–Alder reaction of dimethybutadiene with C60 and fulleroid (calculated with M06-2x/6-31G(d)).

2) 窒素導入による求核性増大: 窒素架橋を導入したアザフレロイドにおいてフラーレン骨格の求核性が増大し, 酸との反応性が増大するのに加え, 置換基によって反応点が変化し, 多重付加反応を起こす場合があった. 酸親和性をDFT計算により求めたところ, アルキル置換基の場合は窒素, フェニル置換基の場合は隣接する炭素の親和性が大きく, 実験結果と一致した(Figure 3) [5].

Figure 3.

 Ambident basicity of azafulleroid for acid reactions.

3) 熱電子移動反応基質探索と機構解明: 本研究において, エナミンおよびジエナミンの熱電子移動反応についてそれぞれ[2+2], [3+2]一付加体が高収率で得られることを以前報告した [6,7]. これらと既知の熱電子移動基質の分子軌道を比較したところ, 同程度のHOMO準位を有していることがわかり(Figure 4), HOMO準位を予め求めることで電子移動反応の候補を予測できることを示した. さらに, 実際のジエナミンの反応において見られた転位反応について遷移状態計算とスピン密度分布から解析したところ, フラーレンへの電子移動で生成したラジカルカチオン中間体の水素移動反応で[3+2]生成物が生ずることが示唆された.

Figure 4.

 Comparison of HOMO levels of SET-reactive nucleophiles.

Acknowledgment

本研究は日本学術振興会科学研究費補助金(No. 24750039 およびNo. 15K21132) の援助で行われた.

参考文献
 
© 2018 Society of Computer Chemistry, Japan
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