Journal of Computer Chemistry, Japan
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研究論文
NMRによる生体高分子の動的秩序形成解析に向けたベイズ推定に基づく構造最適化計算
池谷 鉄兵伊藤 隆
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17 巻 (2018) 1 号 p. 65-75

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抄録

核磁気共鳴分光法 (Nuclear Magnetic Resonance; NMR) は,溶液状態や生きた細胞内のようなより生理的条件に近い状態の生体分子の3次元立体構造やダイナミクスを原子分解能で解析できる現在唯一のツールである.一方で,NMR測定により得られる直接的なデータは,複数のピーク信号からなるスペクトルであることから,ここから分子の構造情報を正確に抽出し,分子の3次元構造を NMR立体構造計算によって再構成する必要がある.特に不安定分子や不均一系の測定データは,感度が低く,多くのノイズを含むため,構造情報の抽出・解析が困難となる.従来の立体構造計算法では,こうしたスパースデータから正確な構造決定を行うことは難しかった.そこで我々は,Riepingらによって提案されたベイズ推定を用いた新しい立体構造計算手法を応用し,この手法に複数の改良を加えた新規手法を開発,NMR立体構造計算ソフトウェアCYANAに実装した.新しく開発した手法では,NOEクロスピークの自動解析とAmberの物理ポテンシャルを用いた構造サンプリングにより,構造アンサンブルからなる事前確率分布を得ることができる.サンプリング手法には,ギブスサンプラーによるマルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC)と分子動力学計算を組み合わせたハイブリッドモンテカルロを採用した.さらに,タンパク質の構造座標変数は膨大で関数空間が極めて広いため,レプリカ交換MCと組み合わせることで計算の効率化を図った.本手法の性能は,既知構造から作成したシミュレーションデータと,実データをランダムに間引いて情報量を減らしたデータ,それぞれを作成し,従来法と比較することで検証した.検証の結果,本手法は従来法と比較して,情報量を大きく減らしたスパースデータに対しても十分に正確な構造決定ができることを示した.

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© 2018 日本コンピュータ化学会
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