2006 年 5 巻 2 号 p. 93-100
本研究ではbis(4-methoxyphenyl)methano[60]fullereneの2付加体を合成し、trans-1異性体及びe異性体の分取を行った。付加数の決定にはFAB MSが確実であり、MALDI-TOF MSは付加数の見かけ上1多いピークが僅かに検出されることがわかった。紫外可視吸収スペクトルは計算(ZINDO/S)と実測で300-400nmにおいて概ね一致し、構造の違いによる特徴的な吸収が500-550nm(e異性体)に計算及び実測で確認された。得られた殆どの遷移に付加基の寄与が大きいMOは関与せず、このメタノフラーレンも吸収スペクトルが主に付加パターンによって決定されていることが示唆された。定性的な収量は1付加体のLUMO及びLUMO+1から解釈可能であることが確認された。同様な推察からこれらの2付加体を出発物質としたときの3付加体の収量を予測したところ、trans-1異性体を出発材料とした時、構造ID0x0800 0081(Figure 1の1,8,28への付加)よりも0x0010 0081(Figure 1の1,8,21への付加)が優位であり、e異性体を出発材料とした場合、0x0800 0081 や 0x0010 0081 よりも 0x0000 1081(Figure 1の1,8,13への付加)が優位であり、それぞれの子孫誘導体にこれら3付加体の共通成分が量的に多く見出せない可能性が認められた。本研究では一般的な付加基に対して構造IDで示される多付加体の座標を求めるツールを開発した。