2009 年 8 巻 1 号 p. 1-12
線形コストスケーリング電子状態計算法のひとつである分割統治(DC)法は,これまで主にHartree-Fock (HF)交換項を含まない密度汎関数理論(DFT)や半経験的な分子軌道計算に適用されてきた.著者らは,このDC法をHF計算やハイブリッドDFT計算に適用し,効率的で有用な方法であることを確認してきた.さらに,エネルギー密度解析(EDA)の考え方を利用して,DC-HF計算で得られる部分系の軌道を用いた線形スケーリングポストHF計算法を独自に開発し,2次摂動(MP2)および結合クラスター(CCSD)計算でこの方法が有用であることを示した.著者らの研究室では,これらの手法は量子化学計算プログラムGAMESSに実装されており,通常の入力ファイルに多少の変更を施すだけで簡単に利用できるようになっている.本論文では,これまでにGAMESS上で開発を行ってきたDC計算プログラムの実装と計算可能なプロパティについて述べ,DC計算の実行方法および計算結果について報告する.