2009 年 8 巻 4 号 p. 183-188
近年、化学データを数学的・統計的手法により解析する「ケモメトリクス」が盛んに用いられるようになってきた。しかし、日本の大学の化学教育の場ではほとんど取り上げられていない。ケモメトリクスや数値計算の専用ソフトウェアを使うことなく、現在最も普及しているソフトウェアのひとつであるMicrosoft Excel(Excel)の基本機能を用いてケモメトリクス計算を行うことができれば、多くの教育・研究機関で役立つものと思われる。シリーズ2回目は、主成分分析を行う際に必要となる固有値問題の求解を例に、Excelの基本的な機能だけで反復計算を実行する方法について解説する。固有値問題の解法には、単純な計算を反復することで最大の固有値とこれに対応する固有ベクトルを同時に求めることができる累乗法を用いた。Excelの特徴的な動作である貼り付けを行ってもコピーした範囲が有効のままであること、および直前の動作の繰り返しを利用することにより、ワークシート上での反復計算を実現した。